台湾高雄 台糖旧工場で五千円札おじさん・新渡戸稲造の銅像を探そう

高雄橋頭台糖舊工廠 旅行(台湾)
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こんにちは、たまごです!

私は岩手県盛岡市出身なのですが、盛岡の偉人の中に「新渡戸稲造」がいます。以前五千円札に肖像画が使われていましたが、それ以上のことはあまり知られていない稲造…。実は台湾にもゆかりがある人物なんです。

稲造は1862年に盛岡藩士の家に生まれました。若い頃から英語を身につけ、農学を研究し、アメリカ・ドイツへ留学、その後札幌農学校の教授となります。じゃあ先生なのか?というと、それだけではないのですね。肩書きを見てみると…

  1. 教育者
  2. 農学博士
  3. 『Bushido』(『武士道』)の著者。 
    宗教的な教育がほとんどない日本で、日本人がどんなふうに社会の決まりを身につけ、どんな考え方をしているか?西洋人に分かりやすいよう、さまざまなエピソードを交えて解説した作品です。
    アメリカ人の奥さんとケンカになったときに、「どうして日本人はそういう考え方をするのか?」を説明するためだったとも。原文は英語で、日本版は本人が書く前に亡くなってしまいました。
  4. 国連事務次官

平和主義者で、世界が第二次大戦に動き出そうとしている中、最期まで平和を訴え続けました。様々な知見やセンスを兼ね備えた、スーパー国際人です。

台湾では、台湾の農業振興のため、砂糖の製造について指導をしていました。

広い!高雄の台糖旧工場周辺全体の様子

高雄の中にも複数の台糖の拠点が一般公開されていますが、今回行ったのは橋頭というところにある施設です。

敷地が広く、高雄はとにかく暑いので、見たいところをピンポイントでチェックして、効率よく回ることをおすすめします。

以下は、日本時代の施設跡です。⑩などの番号は、地図の中の番号です。

今回メインで回ったところ(地図)

① のところにある「倶楽部」

② のところにある「製糖流程館」(製造工程館)

③ 旧工場

⑨ 休憩所(アイスなどの売店)

です。それでは見てみましょう。

稲造は倶楽部にいる(地図➀)

新渡戸稲造像があるところは、測量道具や糖度分析器、内線電話などがたくさん展示されている「倶楽部」というところです。入ってすぐの真ん中に展示されています。

ピラピラとしたラミネート加工の紙ですが、盛岡出身で、1901年に台湾総督府の殖産局局長・糖務局長を担当し、砂糖の改良と生産に携わったことが書かれています。(中国語と日本語の両方)

稲造は「糖業改良意見書」の中で、製造量が減少した背景をいろいろな角度から分析しています。そして、製糖の製造そのものに関するアドアバイスだけでなく、サトウキビ生産者が継続的に製造を続けられるよう、農業組合を作ることなども提案します。結果的には、農民を守るような政策は日本政府によって却下されてしまいましたが、今でいう持続可能性(サスティナブル、フェアトレード)のようなことまで視野に入っていたのだと思います。

ところでこのお部屋の片隅に、なぜか豚のオブジェの展示があるんです。もっというと、入り口が別のもう一つの展示室、「豬仔文物館」には、もっとたくさんの豚の展示があるんです。一体何故なのでしょうか?

豬仔文物館(地図①)

「倶楽部」の隣の資料室「豬仔文物館」にはたくさんの豚のオブジェがありますが、

豚のオブジェの展示があるのは台糖が製糖業の他にも養豚も手がけているからなんです。一時期に比べると規模は縮小したものの、現在も良質な飼料の開発なども行うなど、質の高い豚の生産に力を入れています。

ほとんどがオブジェの展示ですが、台糖の養豚の歴史など説明も、少しだけあります。ご興味のある方は是非ご覧ください。

製造工程資料館(地図②)

日清戦争後日本政府により高雄に「臨時台湾糖務局」という組織が作られ、1902年に高雄の工場が操業、1905年に台湾製糖業に資金を注入していったことが紹介されています。具体的には三井グループによって設立されました。(実際には「日本が台湾の糖業を独占していった」というような内容が記されています。他にも日本統治時代を「日據時代」と表現するなど、この施設の説明は全体的に反日的な表現が多く、興味深いです・笑。)

肖像は左から、台湾総督の児玉源太郎、台湾行政長官の後藤新平、日本・台湾糖業の父で実業家の鈴木藤三郎、そして殖産局局長の新渡戸稲造です。(あれっ?稲造も「台湾糖業の父」ですよね!?笑)

稲造が台湾に来たきっかけは、同じく岩手県出身で、当時台湾行政長官を務めていた後藤新平(水沢出身)に声をかけられたことです。当時台湾の農業を振興させるプロジェクトがあり、一番発展の可能性がありそうな農作物は何か?という質問に対して、稲造は「糖業」だと答えたのです。

キリッと眼光鋭い後藤に比べて、稲造はカーネルおじさんのようなニッコリ笑顔か、遠くを見つめて思索にふけっているような肖像が多いですね。

稲造だけ、名前の一文字が手書き!やっぱり知名度低いからなのかなぁ…?それにしても台湾の国営企業、ゆるいです!(笑)

旧工場(地図③)

製造工程館からさらに奥の方に、旧工場があります。私が行ったときは特に受付もガイドさんもおらず、自由に見学するようになっていました。ガイドツアー希望の方は別途問い合わせが必要なようです。

旧工場では、圧搾機や加熱器、コントロールルーム、糖度分析機器などが見学できます。(入って右方向にある階段から2階に行けます。)

▲圧搾機。

▲コントロールルームです。ここで卒業記念写真を撮っている大学生もいました。自由です。

▲加熱器。時々このでっかいおじさんのオブジェが登場するのでドッキリします。

自由に見学できる、と書いたのですが、言い換えれば放任されている/管理が甘いという感じで、小さいお子さんなどの場合は安全面でかなり注意が必要だと思いました。階段や機械の隙間は、入り込んでしまうととても危ないと思いました。十分お気をつけください。

製造工程館からさらに奥の方に入口がある、と言ったのですが、実は製造工程館の向かい側にある「製糖工場入口」という階段から外の金属製の通路を伝って入ることもできます。

▲製糖工場入口

防空壕

「倶楽部」と「製造工程館」の間あたり、旧工場に向かって左手のところに防空壕があります。花蓮の松園別館というところの防空壕もくぐったことがあるのですが、そこよりも2〜3倍の大きさがあります。

当時ここに逃げ込んだ方々には不謹慎ですが、天気の良い5月の高雄でここに潜ると、とても涼しく、中から見える緑がキラキラしていて、気持ちがよかったです。もう二度とこんなものが必要にならないことを願います。

休憩所(アイス)(地図⑨)

記事のはじめの方の地図の⑨のところに当たります。この日は「紅豆酵母冰(あずき酵母アイス)」(45元)を食べました。言われてみれば、ちょっとしょっぱいような、発酵しているような風味が…?(気のせいかも…。)おいしかったです。

おわりに

歴史のある工場跡を気軽に見学できるので、工場好き・廃墟好き・食品業界に興味がある方にはおすすめです。もちろん岩手県出身の方にもおすすめです!コロナが落ち着いたらぜひ足を伸ばしてほしいです。

それから、結婚写真などの写真撮影に興味がある方にもおすすめできます。先日行ったときはコスプレイヤーがいました。たぶん撮影していたんだと思います。結婚写真などを撮影する場合は事前許可と費用が必要なのでご注意ください。(800元)

TEL: 076119299 内線5番

私はここには6年前にも来ているのですが、その時は稲造像は、今の展示室のさらに奥の方の部屋の一番奥の角の方にひっそりと置かれていました(たまたま整理中だったのかな?)。中国語もたいして話せないのに一人でやってきて、事務所で仕事中の社員さんに、大きなバックパックを預かってもらって見学しました。稲造の銅像とツーショットを自撮りしたのがなつかしいです。

今回、私が見学しているときにたまたま居合わせた日本人のお客さんで「稲造が製糖に関わってることをこの時初めて知った」という人がいました。 能力が多才過ぎて、個々の偉業があまりよく知られていないというのは残念ですが、こうやって知ってもらえるのは同郷として誇りですし、うれしいです。

アクセス

台鉄「橋頭」駅から徒歩3分、MRT「橋頭糖廠」駅から徒歩10分。

 *MRT「橋頭糖廠」駅からの道のりがけっこう楽しいのでおすすめです。

開館時間:月曜〜日曜 9:00~16:00(旧正月などはご注意ください)

入場料:無料




番外編その1: 「橋八文創天地」外にあるショップ

帰り道、MRTの駅に行くまでの間、右手に雑貨屋さんがあります。高雄科技大學が関わっているお店とのことで、工芸品やおみやげなどが売られています。

たまたま試した「手接苦瓜水」という全身化粧水のような水が、保湿感がなかなかよかったので買って愛用しています。

これは高雄の商品ではなく、花蓮産です(笑)普通の苦瓜ではなく、山苦瓜という種類の苦瓜で、日焼けなどをしたときの炎症を抑えて、黒くなるのを防ぐ効果があるそうです。中に沈殿がある商品もあったのですが、沈殿は特に品質上問題があるものではなく、冷蔵もしないでくださいとのことでした。スプレーで使いやすいのでドンドン使ってます。顔がちょっと乾燥した時もサッとスプレーできて便利です。

価格は一本150mlで250元です。

この商品はネットでも買えるみたいなので載せておきます。(高雄のこのお店とは異なります)

台灣高雄市橋頭區興糖路3號
TEL: +886(0)76115207
営業時間: 水・木・金 11:00~17:00
     土・日      10:00~18:00(旧正月などは要確認)

番外編その2: かわいい猫のモモちゃん

雑貨屋さんからさらにMRTの方に歩いて行くと、右手にKM木屋というお店があって、そこに阿桃(モモちゃん)という猫店長がいます。おとなしい猫です。10歳くらいの女の子がファーッと近寄ってきて、すごく慣れた感じでなでなでしていたので、「あなた飼ってるの?」と聞いたら「ちがうよ!」とのこと。どうやらご近所さんに愛されている猫のようで、その後もいろんな人が猫を見にきていました。猫好きの方はコロナが収まったら会いに行ってみて下さい。

◆KM木屋カフェ

橋頭區興糖路7號

阿貓店長出勤時間:土日の13:30〜17:00

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リンク

高雄台糖

日経ビジネス電子版「新渡戸稲造が現代の国連事務総長だったら」

 

<参考にした本>
◆現代語訳 武士道 (ちくま新書)

後藤新平: 大震災と帝都復興 (ちくま新書)

※ネットでも買えますし、岩手の偉人の本は盛岡市のさわや書店に行くと豊富にそろっていますね。

◆矢内原忠雄帝国主義下の台湾

▲新渡戸稲造の影響を受けた経済学者・矢内原忠雄の著作です。新渡戸稲造の「糖業改良意見書」の話題が出てきます。Kindle版は原本のスキャンなので、マーカーしたりはできません。索引はあり。

コメント

こばやし・たまご。台湾新北市在住。東京でのサラリーマン生活、オーストラリア留学を経て、2016年より台湾企業に勤務。
ムカつくこともあるけれど、私、台湾が好きです。

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