現地採用の人間が在外日系企業で心地悪いと思う事/ジョブ型メンバーシップ型

台湾カルチャーショック
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こんにちは、たまごです。

これまで5年あまり、台湾にある、台湾人がオーナーの企業で働いてきたのですが、今年初めて台湾にある日系企業に転職しました。

日本人が日系企業で働くんだから、台湾系企業で働くより楽だろうと思われがちなのですが、実際に起こっているのは、日々の逆カルチャーショックです。企業文化になじめず、困っています…(^_^;)

先日とある本を読んでいたところ「ジョブ型」「メンバーシップ型」という言葉が出てきました。この言葉が、私が逆カルチャーショックの嵐の中で感じている気持ち悪さをスッキリ説明してくれているような気持ちになりました。

勤め先への不満や違和感は山ほどあるのですが、今日は、私が在台日系企業で感じている居心地の悪さが何なのかを、海外と日本での働き方の違い: ジョブ型・メンバーシップ型の違いに絞ってお話してみたいと思います。

ジョブ型・メンバーシップ型とは

ジョブ型・メンバーシップ型の違いとは、海外での働き方と日本での働き方の違いです。

「ジョブ型」は、職務内容と報酬が予め決まっていて、その上で雇用契約を結ぶ働き方。自分のスキルを面接で確認した上で、雇い主と雇われる側が受け入れられる給与額などの条件を話し合い、オファーレターにサインします。

一方メンバーシップ型は、その会社などの組織の「一員となること」が重視されます。本人の持っているスキルや経験は、ときに度外視されます。その時の会社の都合で、自分のスキルがほとんど活かせない部署に異動させられたり、転居を伴う転勤があったりします。

この働き方で会社を運営できる場合、会社に生まれるメリットは、景気や会社の状況に応じて正社員を自在に動かせることです。雇われる側も、仮に会社の都合で自分の所属する部署がなくなってしまっても、別の部署で働ける・・・言い換えるとクビになりにくい、というメリットがあります。


私の父が現役の時は、メンバーシップ型の働き方でした。私は小さい頃転勤族で、父の転勤のため数年に一度引っ越しをしていました。途中、父の勤め先に大変革が起こり、会社都合で、父は自分の専門スキルがほとんど活かせない部署に移動させられてしまいますが、父はそれを受け入れます。そしてリタイアするその日まで、会社の手厚い福利厚生を受け、厚生年金の保険料も長年納め、今は年金で隠居生活をしています。

一方海外(台湾)で働く私にとっては、「ジョブ型」が当たり前です。もちろん、台湾の働き方も100%完全に自分の担当以外の仕事がないわけではないのですが、原則としては「ジョブ型」です。

私は日本人ですが、台湾で働いていて台湾の働き方になじんでいるので、日本の「メンバーシップ型」は心地悪く感じます。会社都合で自分のスキルとまったく関係ない部署で無理して我慢して働くことは想像できません。もし今の勤め先で自分のスキルが活かせる場がなくなってしまうくらいなら、「無理して続けずに、転職すればいい」と思ってしまいます…。

私はフルタイムの仕事と結婚生活の両方を手に入れたかったので、父のように大きな組織に勤めて転勤ばかりするような働き方はしたくありませんでした。父のような働き方は日本では珍しくありませんが、海外から見ると特殊なようです。少なくとも台湾ではこういう働き方はほとんど聞いたことがありません。もちろん台湾にはそんなに大きな企業もないということもありますし、国土がせまい、という理由もあると思いますが…。

◆参考: 「ジョブ型」雇用とは?第一人者が語るメリット・デメリットと大きな誤解 (リクナビ)

ジョブディスクリプションにないことをやらされる

さて、在台日系企業の話に戻ります。

今年とある在台日系企業に転職しました。面接のときに話にあった職務内容は、日本語・中国語・英語を使って資料を作成したりする他、これまでの経験職種も活かせるものでした。採用通知書(オファーレター)の職務内容説明(ジョブディスクリプション)にもほぼ同じことが書かれていました。このポジションの話を友達にもしたところ「たまごにピッタリの仕事じゃん!」と喜んでくれました。私自身も、仕事が決まった時は新しい勤め先で働けるのが楽しみでした。

ところが入社して自分の配属先に行くと、突然「あなたには○○もやってほしい」と、面接でもジョブディスクリプションにもまったく話をされなかった職務を追加で任命されました。※この任務を仮にご老人の介護とします。

この職務は自分の仕事のウエイトの半分以上を占めることになりす。

はっきり言って私はご老人の介護にはまったく向いていません。

性格上、一般のお客さん/利用者さん向けの仕事をすると頭が混乱して、ものすごくストレスを感じてしまうんです。個人相手の業務はイレギュラーなことも多いですが、そうなるとミスも増えるので、ミスしないように意識的に注意します。ですが、そうなると今度は確認行為がやめられなくなります(何度も問題ないと確認しているのに、それでもまだなにか間違っている気がして、何度も同じことを確認したい気持ちに駆られる、強迫性障害のような感じです)。

とにかく私はこのような理由があるので、自分を苦しめないよう、B to B(企業 対 企業)の仕事だけを選ぶようにしています。個人相手の仕事はできないので、転職するときもサービス業や人のお世話をする仕事はすべて排除しています。

そんなわけで、この突然命じられた任務をこのまま引き受けてはまずいと思いました。そもそも、ジョブディスクリプションにもなく、向いていないとわかっている職種を任命されてしまったこと自体がおかしいことです。

私はすぐに、面接でもジョブディスクリプションにも介護の話はなかったこと、自分には向いていないことを上司に伝えました。でもそこで言われたのは、

「でも仕事なんだから、やってみよう?」

でした。これを言われたときの私は、この「仕事なんだから」の意味がまったくわかりませんでした。こちらとしては、「仕事だからこそ」職務内容とスキルを入社前にキッチリ確認しておくべきだと思っているからです。

その後で、先ほどお話した日本型の働き方「メンバーシップ型」のことを知って、日本人駐在員さんがどういう考え方をしているのかわかった気がしました。駐在員さん達にとっては、私は特定のポジションの役割を担う人員と言うよりは、会社という組織に加わった人で、その社員の使い方は会社側の自由だと捉えているのではないでしょうか。

でも私の立場から言わせてもらうと、海外で人材を探して採用して、そこにバリバリの日本型(メンバーシップ型)を押し付けるのは理不尽だと思います。

ひたすら平行線の考課面談

結局私の主張は認められないまま3ヶ月過ぎたある日、担当上司(駐在員さん)との考課面談がありました。上司に不満を伝えるチャンスだと思った私は、あらかじめ提出するよう言われていた面談のときに使う考課シートの「将来の展望」の欄に、「介護よりも資料作成などの分野でステップアップしたい」と書きました。

ところが面談当日上司に言われたのは、「これからもがんばってもらって、一流の介護職になってほしい」ということでした。上司は、私が真剣に書いた考課シートを全く読んでいなかったんです。

私は一瞬たじろいでしまいましたが、「自分は介護の仕事は減らしてほしい」と伝えました。本当は「介護の仕事は辞めさせてほしい」と言いたかったのですが、人手が足りないこともわかっていたので、自分なりに譲歩した形です。

でもそこで言われたのは、

「他に適切な人が誰もいないから、大変だけど引き続きやってほしい」

またもや「仕事なんだからがんばって」

そして「石の上にも三年」

「もっと視野を広く持って。介護職を極めた人は本社の役員にもなっているし…」

…ということでした。

悪気がないことはわかるのですが、言われたことはどれも私が望んでいることと方向性がまるで違っていたので、フラストレーションが溜まるばかりでした。

◆ まず、「仕事なんだから」は、現地採用の人間にとっては、「仕事だからこそ」採用通知書にキチンと職務内容を明記して雇用契約を結ぶべきなので、全く意味をなさない説明になります。

「石の上にも三年」・・・台湾で働く外国人は毎年転職することもそう珍しいことではありません。ジョブ型なので、転職は基本的にステップアップを意味します。引き抜きもあります。転職を機に昇給したり昇進したりすることもあります。今の勤務先で向いていない仕事に3年も費やすことは、自分の仕事人生を3年棒に振る可能性を意味します。(もちろん、今の仕事から得られるものがゼロだとは言いませんが…。)

「介護職を極めた人は本社の役員にもなっている」というのも、現地採用の人間・・・少なくとも私には全く響きませんでした。私は日本本社採用になりたくて働いているわけではないし、大きな会社の歯車として働いて役員になることを目指しているわけでもないからです。私が現職に応募したのは、募集要項が私に合っていて、これまでの経験が活かせそうだったからです。

あまりに話が平行線でひたすらかみ合わず、自分の働く条件も全く改善されず、実際に、ちょっと吐き気がしました。

「日本国籍かどうか」という謎の線引き

福利厚生もないのに

日本のメンバーシップ型の働き方が成立する要因の一つに、手厚い福利厚生があると思います。生活面である程度の保証が得られるからこそ、会社での職務が変わろうが気に入らないことが起ころうが、その会社に長く残る、という選択肢が生まれると、私は思います。

言い換えれば、福利厚生がほぼゼロの現地採用の社員にとっては、元々約束されていた仕事をさせてもらえず、職務内容になかったことをやらされ、しかもそれが本人にとって苦痛であれば、その会社に長く残るメリットは何もありません。

「日本人どうしだから分かり合える」という幻想

日本人駐在員は、現地採用の社員に対して「”日本人だから”長く残ってくれるかも」という不思議な思い込みをしているようです。しかし、日本人どうしだからと言って別に義理もないし、日本の会社に勤めることが日本という国のためになるわけでもないので、なぜ駐在さんがそのように考えるのかは、わかりません。さらに言えば、日系企業に勤める方が他の国の資本の会社に勤めるより働きやすいということもありません。(私の場合、もうできる限り日系は避けたいです…。)

他にも日本人駐在員は、日本国籍の現地採用の社員に対して、台湾人よりも喜んでサービス残業をしてくれると思い込んでいるようです。一時期、残業代が出なくなってタダ働きさせられた期間があります。上司らは、定時から一時間過ぎようとしているタイミングで私にオンライン会議の設定をさせたり、幹部の雑用をさせたりしました。彼らは私の労働力がタダで手に入ると思っているのか、私が個人的な親切か何かでやってくれていると勘違いしているのか、わかりませんが、とにかく何か誤解されていることが気持ち悪かったです。※ただし、サービス残業については、その後台湾人人事担当者に訴えて改善してもらいました。

働き方は国籍で決まるのではない

現地採用は現地採用なのであって、台湾人も現地採用、日本人も現地採用、フィリピン人も現地採用、ブラジル人も現地採用です。国籍が日本以外の現地採用の社員の職務内容は、私が与えられている任務よりもハッキリしているようです。こんな風に、現地で採用した社員のうち、「国籍が日本人である」社員だけにメンバーシップ型を押し付けるのは筋が通りません。

当然のことですが、働き方は働く人の国籍で決まるのではありません雇用条件によって決まるのです。そのことを在外法人は勘違い(あるいは気づかないフリを)して、現地採用した日本人社員を安い賃金で利用しているように見えます。福利厚生や現地給与は抜きにして、基本給の額面だけ見ても、今私が台湾でいただいているのは、東京で働いた場合の約半分となると推定されます。駐在員さんたちとは元々雇用条件が全く違うので、待遇以上のことを求められるのは道理に合いませんよね…。

おわりに〜これからどうしよう!?

今回海外で初めて在外日系企業に勤めた私ですが、改めて「合っていなかった」と痛感しています。これから台湾でサラリーマンとして仕事を探すときは、台湾系やアメリカ系、イギリス系など、とにかくできる限り日系企業を、特に、伝統的な日本企業は避けるようにしたいと思っています。

もう一つの方向性としては、将来フリーランスでも食べていけるような人材に成長することです。そうすればどこかの組織に所属して働く必要はなくなります。そのためには、(1)日本語以外の語学(私の場合は英語と中国語)をもっと伸ばすこと・(2)語学以外の資格を手に入れること、この2つが近道だと考えています。

今回言いたかったこと

今回言いたかったことは、ジョブ型・メンバーシップ型のどちらが優れた働き方か、という話ではありません。どちらも、その企業が設立されている地域の文化や、会社のやり方に合わせてうまく使って行ければいいと思うし、完璧に100%ジョブ型かメンバーシップ型のどちらかにしなければならないということもないと思います。

ただし、日本国外ので現地の人間を雇うときに、経営者や幹部が現地採用の社員に日本型のメンバーシップ型を押し付けて、ジョブディスクリプションに合わないことをさせるのは間違っていると私は思います。もしそういうことをさせたいのなら、採用通知書のジョブディスクリプションに明記し、お互い納得した上で雇用契約を結ぶべきです。

日本人同士だから何でもわかりあえるというのは幻想に過ぎません。

現地採用の日本人社員がなぜあえて海外で仕事しているのか? ––台湾の日本人現地社員に関して言えば、ずっと日本にいれば今よりはるかに高いお給料をもらえて、手厚い福利厚生も受けられるのに、なぜわざわざ日本を飛び出して現地で働いているのか?在外日系企業はそこをよく考えるべきです。もしそういうことを考えずに現地採用に駐在さんと同じ働き方を押し付けるなら、それは単なる搾取です。


みなさんは、ジョブ型・メンバーシップ型についてどう思われますか?もし私と似たような経験をされたことのある現地採用の方、日本で働いていて今の働き方に疑問を感じている方、などなど、ございましたらコメントいただけるとうれしいです。今回もお付き合いいただき、ありがとうございました!

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こばやし・たまご。台湾新北市在住。東京でのサラリーマン生活、オーストラリア留学を経て、2016年より台湾企業に勤務。
ムカつくこともあるけれど、私、台湾が好きです。

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