こんにちは、たまごです。今日は私が台湾企業で働いていて経験した、やりきれない失敗を2つご紹介します。
一体どうすればよかったのか、絶対にコレ!という正解はないと思いますが、台湾で台湾企業と日本企業の間に立って仕事する人には共通する問題だと思うので、まとめてみました。
仕入先に情報だけを抜かれる
台湾企業で日本人スタッフを雇っているケースは、たくさんあると思いますが、注意しなければいけないのは、 日本人スタッフを通して情報だけ抜かれ、実際のビジネスに繋がらないということがあるということです。
私は台湾人オーナーの商社で働いています。社内に日本人は私ひとりですので、大事な仕事を任されることも多いです。担当している大事な仕事の中に、日本のサプライヤーの商品を台湾に導入するという任務があります。
日本メーカーの商品は、台湾で人気がありますので、台湾の多くの商社は競争して、日本の商品の販売権、できることならば総代理店契約をしたいと考えています。
さて、当時私たちの会社も、とある会社のある商品の総代理店に立候補していました。その時はあっさり断られてしまったのですが、数週間後、日本のメーカーから「今後のため」という名目で、
「日本語と英語の契約書を作ってほしい」
という依頼がきました。理由は、この日本のメーカーは、台湾企業と正式な代理店契約を交わしたことがなく、どういう内容を盛り込めばいいかわからないということと、メーカーさんの社内に英語ができる人がいないということでした。
※中国語が読める日本のメーカーは少ないので、契約書は英語を共通言語として使用するケースがほとんどです。
私たち台湾の商社としては、この日本メーカーは私たちとの将来を真剣に考えているんだ!と喜んでしまいました。それで上司からも、「早速契約のドラフトを作って差し上げなさい」と言われました。バカな私はウキウキした気持ちで、ドラフトを作り、日本のメーカーに渡してしまいました。
同業他社に出し抜かれる
その数カ月後。お客さん伝いに、その日本のメーカーと、別の台湾の商社が総代理店契約を結んだという情報が入ってきました。
あわててメーカーに確認を取ると、「申し訳ないけれどそういうことになった、総代理店契約は、特定の一つの商品についての契約なので、他の商品は御社との直接取引を続けられる」という話をされました。メーカーさんにはメーカーさんの社長の方針もあると思うし、担当の方には平謝りされました。
でもやっぱり電話を切ったあとの気持ちは
「いいように利用された」
でした。
たとえが悪いかもしれませんが、口約束で婚約していていろいろ尽くしたりプレゼントしたりしたけど、ある日突然別の人と結婚されてしまったような、そんな感覚です…。
こうなるとむしろ自分の勤め先に日本人担当者はいないほうがいいんじゃないか?とさえ思えてきてしまいます。日本人社員がいたばっかりに都合よく頼られて、仕事が増えた結果、総代理店契約は同業他社に取られてしまっているので…。はっきり言ってオウンゴールです。このときばかりは、社内の自分の存在意義を疑ってしまいました。
「お願い」への答えは慎重に
取引先からのさまざまな「お願い」、たとえば、
・台湾の法規について教えて
・この資料の翻訳をして
・契約書のひな形を送って/英語版を作って
などなど……
“お願い” “教えて”…は要注意です!!
情報をいっぱい持っていることから「頼りになる」と判断され、取引がスタートすることも多いです。
そして、もちろんこういった資料は、上司も許可した上で渡していました。その時の直属の上司はどちらかというと「あげちゃえばいいさ」というタイプで、前向きでサッパリとした性格の人でした。でも私はアダを忘れない性格ですし、二度とこんな思いをしないようにしようと思いました。
でも、取引先ですので「教えてほしい」と言われればそれを断るのもおかしいです。
ということで、この件以降は総代理店契約を結んでいる取引先以外には、情報を少〜しずつ小出しにするようになりました。
日本人社員やりきれないエピソード、その2に続きます!
お客様にいいように利用される
私の勤め先は商社ですので、これから取り扱う商品が台湾の法律に合致しているか?台湾で売れそうかどうか?などを細かく調べます。 必要に応じて、政府や関連機関にさまざまな問い合わせをします。
もちろんこれはお客様に販売するためです。 こうした労力を費やして確認した結果や、時間をかけて集め、作成した資料を、専門の知識と経験のある営業員の解説付きで、お客様に渡しています。
私の担当しているある日本製の商品も、市場開発をしていた当初、とある大口のお客様のリクエストでたくさんの資料を請求し、翻訳や法規の確認などを進めました。このお客様は、特に日本メーカーの新商品に興味がある企業です。私が日本人で、日本のメーカーとのやり取りも密に行っていることも知っていて、遠慮なくバンバン膨大な資料を請求してきました。その商品はその後、主にそのお客様向けに販売を開始することができました。
ところがある日、そのお客様からの受注が突然ストップしてしまいました。
後で調査して分かったのですが、その時を境いに、お客様が日本のメーカーと直接取引を開始していたのです。
正確には台湾のお客様が、とある日本の企業の関連会社(資本関係)となって、その日本の関連会社を通じて私たちの仕入先と取引を始めたということです。
※「その後の流れ」では、「台湾の商社」(私たち)が排除されています
私たち商社の手厚いサービスを享受しながら、お客様は私たち商社を飛び越えて、 メーカーと実質上の直接取引を始めたのです。
このお客様には、私たちの会社から他の日本のメーカーの商品も納めていましたが、おそらく同じ方法で、他の商品もメーカーと直接取引を始めたようでした。
商流の変更に関しては、お客様やメーカーからは、私たちにはなんの予告も無しでした。
この時の私の上司は「誰と取引するかはお客様の決めること。自分たちが入る余地はないよ…」とあっさり諦めてしまいました。
確かにお客様には取引先を選ぶ権利はあるかもしれません。でもこのお客様は明らかに、最初の面倒な導入の仕事を私たち商社にやらせています。自分たちではできないから、最初だけ専門の商社に頼んだのが見え見えです。
そしてこのお客様、実は日本に設立した日本の現地法人もあるんです。日本の現地法人ではなく、日系企業を関連会社にした上で、その日系企業と日本のメーカーとで直接取引させているところが、巧妙でずるいなぁ、と個人的には思いました。
形上は日本の会社同士の取引になってしまっているので、私たちが割って入る余地はありません。その何年もかけて成功させた販売ルートは泣く泣く諦めるということになりました。
もし日本人の私がそもそもこの商社で働いていなかったら、お客様は最初から私たちにそこまで頼ることはなかったのかもしれません。私がこの商社で働いていたばかりに、私だけでなく営業職も做白工:無駄働きを強いられることになってしまいました。
台湾のモンスター顧客(澳客:アオケー)
ただ、このお客様は台湾のお客様の中でも、もともと、かなりお行儀の悪い会社なんです。
これまでこの会社が私たちに何をしてきたかというと…
- ある日突然20~30件に亘る、工場との確認が必要な資料を請求して、「当日ほしい」と言ってきます。
- 商社の営業職に対して、早朝・深夜に関わらずLINE電話&メッセージを一日に何度も送りつけてきます。
- 普段在庫していない商品でもすぐによこせと言ってきます。私たちが最短の納期を確認して連絡すると、後出しジャンケンのように、その納期よりも一週間前倒しで納品しろと言ってきます。
- 取引条件は90日手形決済(建設業者かよw)(ちなみに私たち商社からメーカーへの支払いは、現金前払い〜30日後払いです。)
- もし納期が遅れた場合、違約金を取るとも言ってきます。
- お客様は正式な発注をしたあとも平気でキャンセルしてきます。(このお客様のために特別に発注した商品在庫が、私たちの倉庫に眠り続ける(泣))
- こうしたメチャクチャなワガママが通らないとわかった途端、ヒステリックに台湾語を使って私たちの商社の営業職を罵ります。(台湾語の方が中国語よりも、人を罵るのに適している表現がいっぱいあるんです。)
※注: このお客様は台湾の上場企業です。それなのに、完全に不合理・不平等な契約書を交わそうとしてきたりして、コンプライアンスも何もありません…。
※残念ながら、こういうモンスター顧客は「台湾あるある」です!!
同僚に「台湾ではこんなメチャクチャな会社が上場できるのか⁉」と聞くと
「こうでもしないと大きくなれなかったとも言えるよ…」と、やっぱり半分諦めモードの答えが返ってきました。
台湾のお客様の中には、こうしたモンスター顧客「澳客/漚客」(アオケー、台湾語で”劣悪な顧客”のこと)も割と多いです。
この会社に関しては、もし自分が社長だったら取引を打ち切りにするレベルです。
その後どうなったか
まず日本のメーカーにダメ元で、商流を元に戻してほしいとお願いしましたが、日本のメーカーも、台湾のお客様に直接販売しているわけではないということもあり、成功しませんでした。
その後、今後同じこと・・・導入当初だけ私たち商社を利用して、その後商社を飛び越えて取引すること・・・が起こらないよう契約書を作って、お客様と日本のメーカーにサインしてもらうことも提案しました。でも上司からは「そんなことしてもムダだ」と言われ、却下されてしまいました。ムダだとしても、少しでも抑止力になればいいな、と思ったのですが…。
こういう事件が起こった当初は、「日本人スタッフの自分がいたばかりに、必要以上にお客様にアテにされた、それが同僚たちの努力を無駄にした」、と落ち込みました。でも、落ち着いて考えてみると、日本人社員うんぬんの前に、このお客様自身がもともと悪質なんですね。
この事件があってから、上司にも「このお客様のためだけに積極的に商品開発することは、もうしたくない」とハッキリ伝えました。
仕事なので、今でも一応はこのお客様のリクエストには答えてはいます。でもこのお客様の要望は私のタスクリストの一番下に並べることにしました。(そしてそれを上司に黙認させています。)
私はボランティアではないので、他のまっとうな、私たちをちゃんと人間扱いしてくれるお客様からの真面目な要望に、一生懸命答えることに集中することにしました。
おわりに〜それでも日本人社員を雇う意義はある
このように、日本人スタッフを雇っていたばかりに、結果的にそれがアダとなってしまうこともあります。
ただし、もちろん日本人スタッフを雇っているからこそよかったこともたくさんあります。
誠実・正確
台湾人の言う「大丈夫」が、日本人にとっては全然大丈夫じゃなかった経験、ありませんか?
個人差はありますが、台湾人と日本人とでは、どこまでが許されることで、どこからがいけないことなのか、判断基準が違うこともあります。
台湾の商社の中には以下のようなことをする企業もいます。
・通関をスムーズにするために、書類を事実とは違う内容に書き換える
・日本のメーカーに無断でメーカーの資料をネットに載せたり商品デザインに組み込む
・送料は仕入先持ちの貿易条件だったのに、日本のメーカーが書類のミスでメーカー持ちになっていた。それをメーカーにはわざと伝えず、そのまま送料を払わせる
※すべての台湾人がこういうことをしているわけではありません。
実は私の同僚の中にもこういうことをしようと言ってくる人もいます。台湾の企業は離職率も高いので、「その時だけ しのげればいい」と目先の利益だけを考える社員は、日本よりも多い印象があります。
でも私がもしこういう不正に直面したら阻止します。こういうことを日頃からやっていたら、いずれ日本の会社からの信用もなくなってしまうと思うからです。日本の取引先からも、「御社の場合はこういう不正をされる心配がないから、安心して付き合える」と言ってもらえています。そう言われると、バカ真面目にやってる甲斐もあるんだな、と慰められます。
ここぞというときに思い出してもらえる
何かを台湾市場に売り込みたい、台湾市場や法規のことを詳しく知りたい、台湾の実際のところを知りたいーーそんなときに、一番に思い浮かぶのは誰でしょうか?台湾企業で働いている日本人がいたら、一番心強い…というか、アテにできるのではないでしょうか?
いくら言葉ができても、お互いにイメージしているものが違った、ということは往々にしてあります。そういう文化的なズレも、日本での就労経験も何年かあって、実際に台湾に住んでいる日本人がいれば、「本当のところはどうなのか」という実態について聞き出しやすくなると思います。
今日は主に、台湾現地採用で働いている日本人が陥りがちな失敗:仕入先にもお客さんにも利用される、というお恥ずかしいエピソードを、2つお話しました。
台湾の会社で働いていると、達成感も多いですが、今回のようにガッカリすることも多いです。そのときの上司の判断にもよりますが、いまだにどうすればベストだったのかわからずにいます。
いろんな方法があると思いますが、「利用される」のではなく、うまく工夫して「頼られる」存在でいたいと思っています。有力なお客様だから・大手メーカー様だから偉いとか、商社は間に入っているだけだから立場が弱い、というのではなく、お互いに尊敬し合って気持ちよく商売ができたらいいな…と思います。
今日はここまでです。お付き合いいただきありがとうございました(^^)
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