台湾人ならみんな知ってる蔣渭水ってどんな人?”蔣渭水驛站”21年3月まで

台湾社会学習
この記事は約5分で読めます。

こんにちは!たまごです。

先日迪化街の近くを散策していたところ、偶然蔣渭水の展示をしている場所に遭遇しました。「渭水驛站(你好,渭水 Hello, Wei-Shui)という展示です。

蔣渭水は元々お医者さんでしたが、のちに社会運動も起こしていく台湾のエリートです。場所は、かつて渭水が医師をしていた大安病院のそばです。こちらは企画展で、2020年10月から2021日3月までの特別展だそうなのです。まだ日本に統治されていた頃、台湾人を完全に日本人と同じように教育する一方で、台湾出身者と日本出身者の身分差別するというやり方が行われていました。蔣渭水は、深く考えずにそういうやり方に甘んじている台湾人に「本当にそれでいいのか?」と問いかけた人です。この展示室は一階部分のみで、大半が文字での説明で展示物は多くはないのですが、中に手にとって読める当時の雑誌のコピーがあるので、それが一番の見どころだと思います。

決してハッピーではなかった日本統治時代

2020年にNHKと公視テレビ局で放映されたドラマ「路」の中に、日本統治時代に台湾で高校時代を過ごした中野さんというおじいさんが、当時台湾出身の同級生に「お前は二等国民なんだ」というシーンがありました。おじいさんはそのことを深く後悔します。しかし、当時は日本出身者から台湾出身者に対してそういうことが平気で言われていたのだと想像します。

日本語を勉強したり日本式の教育を進んで受けたり、日本語名に改名したりすることで、仕事の面で優遇されたりと言うこともあり、大半の台湾出身の人々はお上の言うことに従います。それでも、どんなに努力しても、どんなに仕事ができても、もともと台湾出身であれば「二等国民」扱いされてしまうのです。

台湾を旅行すると、現地の人から「日本時代は良かった」と言う話を聞くことの方が多いかもしれません。台湾にやってきた日本人に対してわざわざ悪いことを言ういじわるな台湾人はそういませんので、当然です。実際には、いいこともあったかもしれませんが、やはり台湾は「植民地」で、日本人による台湾人差別がありました。

大人しく日本政府に従っていれば待遇は悪くなかったようですので、こうした状況にあえて一石を投じると言うのはとても勇気のいることです。何度日本政府に逮捕されても信念を曲げようとしなかった蔣渭水さんという人は尊敬すべき人だと思います。

「台湾の孫文」蔣渭水の人生

蔣渭水は日清戦争の少し前、1890年に、当時清朝の領域であった台湾の東北部、宜蘭で生まれます。お父さんは宜蘭城隍廟と言うお寺の、占いの先生をしていた人だったそうです。

その後1895年、日清戦争に勝利した日本が台湾を植民地にします。お父さんの意向で、日本の教育は受けさせたくないと言うことで、日本政府が作った日本語で日本式の教育をする学校ではなく、私立の漢文を教える学校に通ったそうです。それでも、日本政府の方針で、日本政府の学校を出ていないと仕事が見つけづらくなります。渭水は日本の学校に中途入学しますが、普通の子は6年かかるところを3年で修了するなどの秀才ぶりを発揮します。その後医学を志し、台北でお医者さんになります。

1920年代になると日本で「大正デモクラシー」が起こり、若者たちから、これまで行われていた不平等な政治への不満や問いかけが出されるようになります。渭水は日本留学中にこうした思想に触れ、のちに台湾で社会運動をするようになります。

厳しい日本政府の取り締まりにより何度も逮捕されますが、それでも意思を曲げませんでした。その後、チフスにかかり、わずか40歳(数えで41歳)で、たくさんの家族に見守られながら亡くなります。告別式は盛大に行われ、なんと5000人もの台湾人が参列したそうです。彼の偉業をたたえて、多くの人が「台湾の孫文」と呼んでいるそうです。

展示の様子

展示室の中ほどでは、元々お医者さんだった渭水さんが、台湾を患者になぞらえて出したカルテのような「臨時講義」が映し出されています。台湾は不平等な日本統治に慣れきって、自分の頭で考えることをやめた重い病気にかかった患者、と言う内容です。必要なお薬の処方はたくさんの学校教育、図書館などなど…。ブラックユーモアとも言えるような、当時の台湾人に対する問いかけです。

▼実物大の当時の雑誌のコピーを手にとって読むことができます。言語は日本語だったり、中国語だったり。

▼この側は遠くから見ると台湾の国旗のように見えますが、よく見ると「台灣民眾黨」と言う政党の旗です。台湾でできた台湾人による初めての政党です!

▼当時日本政府の収入源の一部だった、アヘンの政府専売にも反対しました。

お買い物の合間にちょっと寄れるような場所&サイズの展示なので、ご興味のある方はぜひ見学してみてください。

施設の概要

展示名:渭水驛站「你好,渭水 Hello, Wei-Shui」

所在地:台北市大同區延平北路二段27號

入場料:無料

URL:https://www.facebook.com/WeiShuiStation/

地図:

参考になるビデオ

民視新聞の「台灣演義」と言う番組で、2014年に蔣渭水の一生を紹介しています。

このビデオで重要なのは後半部分です。ですが、前半の生い立ちや、台北でおめかけさん(第二夫人)を作ってしまうところも意外でおもしろかったです。社会運動を始めてからは正妻よりもこの第二夫人(陳甜さん)の方が活躍しますし、いろいろな資料にも出てきます。渭水さんの息子さんが「当時はだんなさんが二人目・三人目の奥さんが欲しいと言ったら、正妻は反対できなかったんだよ」と話します。現代に生きる私からすると、民主主義のイメージと一夫多妻制は食い違う感じがするので、それも興味深いです。

▼民視新聞「台灣演義」2014年2月8日

おすすめの博物館

今日ご紹介した展示室を熱心にみていたところ、こちらの展示室の職員さんが「臺灣新文化運動紀念館(昔の臺北北警察署)、まだ行ったことないならぜひ行ってみて!」と教えてくれました。先日見学してきましたが、とてもおすすめです。近く記事をアップしたいと思いますので、おたのしみに…!!

コメント

こばやし・たまご。台湾新北市在住。東京でのサラリーマン生活、オーストラリア留学を経て、2016年より台湾企業に勤務。
ムカつくこともあるけれど、私、台湾が好きです。

\たまごをフォローする/
タイトルとURLをコピーしました