こんにちは、たまごです。
台湾にやってきて、現地採用で働いて5〜6年になりますが、今回初めて在台の日系企業で働いています。それまでは、すべて台湾人オーナーの会社で働いていました。
台湾人オーナーの会社で働いていたときは、「この会社、グダグダだな」と思うことも多かったのですが、別の環境に来てみて、実はヘタな日系企業よりもずっと優れていることがいくつもあることに気が付きました。
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全員がチームの一員だった
とある在台日本企業では、日本人上層部だけがいつも忙しそうにしています。社内を改革しようとしているそうです。この日本人上層部は、会議は台湾人の社員と開く時も、役職がかなり上の立場の人としか開きません。台湾人上司との部門の全体会議もありません。いつも上の人たちだけで集まって、とても張り詰めた空気の中で何かやっています。
でも他の一般の社員には上の意思が伝わっていないし、これまで通りお給料がもらえていればいいので、何かを変えなければいけないという意思は薄いです。
一方、以前勤めていた台湾系の企業(輸入業者)は、毎朝部門会議を開いていました。この日本企業より規模が小さかったからできたことかも知れませんが…。メンバーは、部門長と営業職、購買、専門職、アシスタントさんです。よほど急ぎの案件がない限り、毎朝100%部門の全員が参加します。
会議の内容は、
・前日の部門の売上
・各営業職の売り上げと今月の目標に対して何%進んでいるか
・昨日出荷した主な商品
・現在受注している主な商品
・輸入予定の商品の出荷予定日・台湾への到着予定日
・部門のメンバー 一人ひとりが前日に行った仕事を報告。
営業職は主なお客さんが今どんなプロジェクトを進めているかを購買に説明し、新しく開発してほしい商品についてリクエストしたりします。
購買は海外からの新しい商品の情報や、輸入上遭遇しているレギュレーションの問題などについて共有します。
専門職は商品の特徴や、化学的な説明や、台湾政府機関への様々な申請などについて提案します。
このように、各職種にまたがって、今どんなことをしていて、どんな問題にぶつかっているのかを毎日共有する場所がありました。
また、毎日売り上げをチェックすることで、部門全体に「がんばろう」と言う気持ちが生まれます。と言うのも、部門が目標の売上・利益の一定%を超えないと、ボーナスに反映されないからです。だから営業職以外の社員も、数字に敏感になります。営業職からは日中も外からバンバン電話がかかってきて、購買やアシスタントに、お客さんからのリクエストが伝えられます。購買やアシスタントも、自分たちのボーナスがかかっているので、できるだけ早く営業職のリクエストに応えようとします。
この台湾系企業に勤めていたときは、「会議は必要だけど、毎朝全員で開く必要あるのかな」と思っっていました。でも今になってみると、日系企業で日本人だけ妙に忙しそうにしていて、他の社員との分裂が起きていて改革が進まない状況に比べると、台湾企業でのあの会議はよっぽど効果があったと感じます。
毎朝全員で様々な課題や成功例を共有することで、「たくさんボーナスが欲しい」「チームのためにがんばりたい」「がんばっている同僚のためにがんばりたい」と言う気持ちになります。
異なる言語の話者をのけものにしない
ところで在台の日系企業で社内分裂が起きてしまうもう一つの大きな理由は、言葉です。某日系企業の日本からの駐在員さんのほとんどは、中国語が話せません。ただ、ほとんどの人は英語は話せます。そして、台湾人社員のうち高い役職についている人のほとんどは英語が話せます。
そうであれば、台湾人社員との会議は、原則オール英語で行われるべきです。
しかし、日本人幹部は自分の都合で、会議の途中からすべてオール日本語で話し出します。みんなこの人に対しては「日本人幹部様様」と言う扱いなので、誰かが途中でさえぎって英語や中国語に翻訳したりと言うこともできない雰囲気だそうです。
でもその会議って開いた意味はあるのでしょうか?台湾人幹部は「自分は日本語がまったくわからないから、果たしていつも会議に参加している意味があるのかどうか、わからない」と漏らしていました。台湾人幹部を呼んで会議を開く目的は、日本人幹部がたまに何かわからないことがあったときにすぐに聞くことができて都合が良いからと言うだけです。「会議」を開く目的は、日本人幹部が自分だけ理解して納得したいためで、会議に出席しているメンバーと課題や方法を共有/検討するためではないのです。
一方、この日系企業の別の部署では、役職のない日本人駐在員さんと、台湾人現地社員との会議は、オール中国語でやっているそうです。この駐在員さんは中国語はほとんどわかりません。タイミングを見て、他の社員さんにお願いしてやっと、今何を話していたかを英語で少しだけ教えてもらえる状況だそうです。
駐在員の幹部が日本語ばかり使って自分のためだけに「会議」を開くこと・台湾現地社員が中国語ばかり使って日本人駐在員をのけ者にし、何のフォローもしないことは、等しく罪だと思います。
中国語がヘタでもバカにしない
「K他命」と新人日本人社員への敬意
一方、私が以前台湾系の会社に入社したばかりの頃、私はほとんど中国語が話せませんでした。でも、そのことで怒られたりバカにされたりしたことは一度もありません。
私が以前勤めていた台湾系商社で所属していた部門では、健康食品原料も輸入していました。私は例によって朝会で、前日やったことをたどたどしい話すのですが、「維他命K(ビタミンK)」と言いたいところを、舌がどうしてもうまく回らずに、「K他命(ケイタミン、麻薬の名前)」と言ってしまうということがありました(笑)。何度も言い直そうとすればするほど、ドツボにハマって、もう「K他命」しか出てきません。
焦ると同時に、私の所属部門は部門長を筆頭に冗談好きな人たちが多かったので、みんな、笑ってるかな?と思って見回したところ、全員が全員とても真剣な顔をしていたので驚きました。そして、向かい側の座席に座っている、普段は冗談ばかり言っている営業職さんも真剣な顔でこちらを見て、「いいよ、続けて」と言わんばかりにゆっくりうなづいていたのです。それでようやくゆっくりと「維他命K」が言えて、自分の報告も無事終わりました。
後から聞いたところ、みんなその時のことはよく覚えていないと言うことでしたが、「たぶん たまごはその時入社して間もなかったし、一生懸命話そうとしてたから、みんなもふざけちゃいけないと思ったんだと思うよ」と言われました。
会議で「K他命」なんて、おもしろすぎる…!!と自分では思ってしまうのですが、普段冗談が大好きなみんなが、中国語が下手な私に対しって、「真剣にやっているから」、と敬意を払ってくれたことに感動しました。
その部署では、上司・同僚が、中国語の下手な私に、紙に書いたり、身振り手振りを使ったり、英語を使ったりして一生懸命教えてくれました。私も一生懸命それに応えようと努力しました。それで仕事も中国語も覚えていくことができました。本当に、周りのみんなに育ててもらっていたんだなぁと感じます。
現地語が話せないクセにムダに偉そうにする日本人駐在員
一方、とある在台日系企業では、駐在員のほとんどは中国語が話せませんが、そういう人の話す日本語自体が分かりにくいというのは往々にしてあります。
海外に慣れている日本人の場合、例え外国語が話せなくても、外国人にわかりやすい日本語で話すコツを知っていたりします。できるだけ、何かを特定できるような完結な言葉を使って、一文一文を短めに区切ったりする方法です。
でも、海外経験の浅い日本人駐在員の中にはそういうことを考えもつかない人もいます。その結果、台湾人の部下が本来意図していたこととは違う作業をしてしまったりします。そしてそれは、台湾人社員の確認ミスだったことにされてしまいます。
こういう行き違いが頻繁に起こる場合、指示を出している日本人駐在員のやり方にも改善の余地がないかどうか、自分で反省するべきだと思います。そもそも日本人駐在員は、台湾人社員の助けがなければ、台湾で仕事をすることは不可能なので、そのことを常に念頭に置いて、感謝の気持ちや相手への敬意を忘れずにいるべきだと思います。
面子文化
台湾ではみんなの前で特定の個人を叱らない
以前、台湾の会社は面子ばかり重視して、何か問題が起きたときも、原因の追求が不十分だと感じることが多くありました。個々の面子が大事なので、誰かが何かミスをしても、あからさまにみんなの前で怒られるということはほとんどないんです。
ところが今の勤め先の日系企業では、何かあると上長から罵倒されます。(しかも罵倒されることの半分くらいは、実はその上長自身のミスが引き起こしている問題なのです…理不尽です。)
まるで虐待の連鎖 in 日系企業
罵倒、と言いましたが、在台日系企業で部下を罵倒をしている上長は、普段日本の親会社の重役から罵倒されているんです。
先日会社で理不尽に怒鳴られたあと、家で夫に八つ当たりをしてしまい、その時ハッとして夫に謝りました。
親会社の重役が海外子会社の重役を理不尽に罵倒し、その子会社の重役がそのまた部下を罵倒する…虐待の連鎖を見ているようでした。
悪いニュースも「沒關係」と受け入れる
台湾系企業に勤めていたときは、どんなに悪いことが起きても、上司たちはよく
「沒關係,我們再想辦法吧」
(大丈夫、なんとかする方法を考えよう)
と言って、受け止めてくれました。(台湾人は良くも悪くも日本人より楽観的だなぁと思うことがよくありますね(^^;)
でも今の日系企業では、何か悪いニュースが入って来ると上長が怒りをあらわにします。そうなると起こりがちなのが、隠蔽体質です。
でも、私がフレッシュマンのとき新人研修で教育されたことに、「悪い知らせこそ、できるだけ早く伝える」というのがあります。悪い知らせを放っておくのはとても危険です。
でも上長が威圧的だと、重要な情報がリアルタイムで上がって来ません。部下は報告をためらったり、上長の機嫌をうかがったりします。そうしているうちに、どんどん時間が経ってしまいます。そして、その知らせが遅れたことでまた何か悪いことが起これば、それもまた部下のせいにされてしまいます。こんな風に、この在台日系企業では、フレッシュマンですら知っていることができていないのです。
こうしてみると、面子を重んじ、頭ごなしに部下を標的にして叱ることなく、「大丈夫」と言って受け止め、1秒と待たずにすぐに次の方策を考える台湾式の方が、集団として優秀なのかも知れません。
日本人どうしだからこそ不満に思ってしまう?
在台の日系企業をたった一社経験しただけで結論付けるのも気が短いかもしれませんが、やっぱり私はいかにもな「日系企業」は向いていないんじゃないか?と思いました。
日本人の友人の誰かも言っていたのですが、例えばどうしても理解できないこと・理不尽だと思うことが起きても、もし相手が自分とは違う国籍の人で、元々の文化が全然違っていれば、『そういうものなんだ』と受け入れられる。でも、もし日本人どうしで意見が食い違ったときは、その溝を埋められない、ケンカになってしまう。」と言うことでした。
ちょっと矛盾しているかもしれませんが、ちょっとわかる気がします。
例えば私は華人の面子文化は解せない部分が多いと思っているのですが、最終的には「まぁでも、自分の文化じゃないから、みんなの好きにさせておけばいいか」と割り切れるのです。
でももし日本人どうしで考え方の違いでぶつかってしまったら、日本人はほとんどの場合、同じ文化を共有している単一民族ですから、そういう「割り切り」はできなくなってしまうんですね。
おわりに
以上、在台日系企業よりも、台湾系の企業のほうが優れていたと思うことパート2でした。
ただもしかすると、単純にこの日系企業がモラハラ企業なんじゃないかという気がしてきました…。精神的にダメージを受ける前に、なんらかの行動を取りたいと思います。例えば私が病気になってしまっても、会社は健康な自分を返してくれるわけではありませんからね。海外で働く人は特に、自分の身は自分で守ることが大事ですよね!
今回はここまでです。今日もお付き合いいただきありがとうございました!
台湾で働いていらっしゃる方、「あるある!」と思ってくださった、「うちの会社は違うよ!」などという方、いらっしゃいましたら、シェアやコメントいただけるとうれしいです。
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