こんにちは、たまごです。
先日、日本人のTさんが解雇された時のお話をシェアしました。
今回は、私の元同僚で日本人の、鈴木さん(仮名)のお話をしたいと思います。会社は専門商社で、総合商社がない台湾にしては、大手の部類に入り、複数の事業部門があります。鈴木さんはその会社で、日本の商品の購買や新商品の買い付け(バイヤー)として採用されました。
私も鈴木さんも、ほぼ同じ時期に入社し、別々の部署で働いていました。
▼Tさんの体験記はこちら
親日&すご腕の会長に惹かれて入社
鈴木さんの解雇の理由はものすごくざっくり言うと、「経営陣が変わってしまい、新しい役員と合わなかった」と言うことになると思います。
鈴木さんは、台湾に来て約10年となる日本人です。台湾に来てからの期間は長く、もちろん中国語も話せます。
なぜこの人がこの会社に入社したかというと、バイヤーの市場開発の仕事をしてみたかったからだそうなんですね。これまでこういう職種は未経験だったそうです。
台湾系の会社に勤めたこともなかったので、うまくやっていけるか不安もありましたが、面接をしたこの会社の会長(80代)が「そんなに不安ならば、ご家族とも一度話をさせてくれ」と言われたそうです。
とういうことで旦那さんを連れて最終面接?というか説明会?に臨んだところ、会長は会社のことや、彼女が担当する予定の部門の今後の展望について語ってくれたと言います。会長は一代でこの会社を築き上げた創業者で、当初は会社の全ての部門の仕事を一人で担っていました。特に市場開発に関しては、日本市場に強く、これから売れるものを見極め、投資を惜しまず、常に新しい商品を追い求めてきました。商売に関して、営業、購買、財務経理、法務、などなど…色々な面でセンスがある方だったのだと思います。良くも悪くもワンマンで、皆を引っ張っていくタイプの経営者だったようです。
鈴木さんも旦那さんも、歴史があるのはもちろん、将来性のある会社だと判断して、鈴木さんは入社を決意します。鈴木さんは新商品開発の仕事をするのをとても楽しみにしていました。
入社間もない頃は、毎日のように会長から呼び出しがあり、今後の日本市場開拓のビジョンや、日本の取引先の話をされたそうです。この「毎日呼び出し」が合わなくて辞めてしまった社員もいたそうですが、鈴木さんは会長の話を聞くのが好きだったそうです。本当にこの会長と合っていたのですね。
というわけで、入社して1ヶ月くらいは、入社前に聞いていた、思い描いていた通りの日々が続きました。
代替わりで状況が豹変
ところが、なんとその後、会長は体調を崩して会社に来られなくなってしまいます。休む日が少しずつ増え、ある日を堺に戻って来られないほどに弱ってしまいました。その約半年後、そのまま亡くなってしまいます。
さて、会長はもう戻って来られないだろうとわかった頃、鈴木さんの仕事内容に変化がおとずれます。
仕事の内容が、面接のときに聞かされたのと全く違うものになってしまったのです。
当初は新開発の商品の情報を収集したり、既存取引先との連絡を取ったり、新規取引を開拓したりという仕事がメインでした。
しかし、会長がいなくなってしまったあと、直属の上司からを毎日任されるのは、輸入費用を試算し、何枚もの発注書を打ち、稟議を回すことでした。これは、外国語ができなくてもできる仕事ですし、わざわざ外国人の鈴木さんを雇ってまでさせる仕事ではありません。
まじめで素直な性格がアダになる
台湾系の会社で「台湾嫌い」を公言しひんしゅくを買う
この方は台湾人夫のためだけに台湾に残っているかたで、実は台湾のことは大嫌いです。元々は台湾好きだったと思うのですが…。暮らしていれば、当然嫌なこともたくさん起こるので、台湾を嫌いになってしまう人がいるのもよくわかります。
台湾を嫌いになってしまった日本人は大概日本に帰ってしまうのですが、このかたは台湾人と結婚してしまって、お相手の方の日本語はビジネスレベルではないそうなんです。ですから、もし一緒に日本に行っても、旦那さんは、今台湾でできているような自分にとってやりがいのある仕事はできないんですね。
ということで、旦那さんのこうした事情を優先して、台湾に残っているんです。
鈴木さんはおしゃれで可愛らしい人で、中国語で色々おしゃべりもできるので、入社当時はみんなの人気者でした。他の部門の複数の同僚からも、代わる代わるランチに誘われて、楽しそうに過ごしていました。
この鈴木さん、思ったことをそのまま口にしてしまう性格で、「台湾嫌い」も隠しません。ですから、会社でも台湾人の同僚に「台湾が大嫌い」だという話を平気で、しかも頻繁にするようになりました。
この会社は鈴木さんがいる部署の他にも日本人社員が2人いましたが、いくつか部門があるなかで、同じ部門に2人以上日本人を配属させることはなかったので、鈴木さんは一日の大半を台湾人の同僚に囲まれて過ごすことになります。
これまで在台の日系企業で働いているときはそれでも大きな問題にならなかったのかもしれませんが、今回、ほとんどの同僚が台湾人の、台湾系の企業でも同じことをしてしまったので、だいぶひんしゅくを買ってしまいました。
彼女の近くの席で働いている台湾人が私に「鈴木さんのことは嫌いではないけれど、あまりに頻繁に台湾の悪口を言われるので、つらい気持ちになる」と漏らしていたことを思い出します。大半の人は、自分の出身国のことを悪く言われたら、いやな気持になりますよね。
クッション役になれない
翻訳者が自分の裁量で、相手に伝えると角が立つと判断した場合、その部分を省略したり、反対に、背景の説明を付け加えて分かりやすくしたりということは往々にしてあります。元々の意図からかけ離れてしまうといけないので、やり過ぎてもダメですが、鈴木さんはそういうことはしていなかったし、どの程度していいのかわからないと話していました。私は、ある程度なら方便も必要だと言ったのですが、結局、同じ部門に日本人の先輩や同僚がいない状態なので、何をどの程度やるのが正解か分からず、悩んでしまったのです。
私の場合は上司から、「もし言い方を変えたほうがうまくいくと思うなら、日本人のお前に任せる」、とハッキリと言われたので、上司やチームの意図が変わらない範囲で、チームが達成したい目標に近づけるよう、言い方を変えることはしばしばありました。そして実際、そうしたほうが話はスムーズに進みました。
私の場合は、上司がこれだけハッキリと「その部分は任せる」と言ってくれたので気楽でしたが、もしこんなにはっきり言われていなかったら、鈴木さんのようにもっと悩んだと思います。
日本式にこだわりすぎた
この日本人社員の鈴木さんは、会長が会社に来られなくなってしまった後も、台湾系の企業で「日本式」を貫こうとします。
例えば、「グリーティングカードの宛名の書き方(レイアウトの仕方)が間違っている」、「日本企業に頻繁に同じことを聞いたらバカだと思われる」、「メールのタイトルの日本語が毎回文字化けするから、システムに問題がある、直さなければ失礼だ」…などなど。
でもグリーティングカードはあくまで台湾の企業が送るもので、受け取る方もある程度日本とは違うということを理解していると思います。少なくとも氏名の最後に「様」はついていたので、他のレイアウトがたとえ日本と違ったところで、取引先は許してくれると私は思います。
メールの文字化けに関しては、鈴木さんは上司を通じて、システム部門に確認してもらえるよう何度も訴えます。毎回メールタイトルが文字化けするのですから、相当気になるのは理解できます。
でも、このとき彼女の上司もシステム担当者も、はっきり言って「めんどうくさい」としか思っていませんでした。確かにタイトルは文字化けするのですが、本文はちゃんと読める状態なので、そんなに近々に解決しなければならない問題ではなかったのですね。
でもは日本企業でしか働いたことがなく、性格的にも曲がったことが嫌いで、入社するときに会長から、「これからも会社をよくしていきたい。もし気になることや改善すべきことがあれば何でも言って欲しい」と言われていたので、気になったことをすべてそのまま社内で話してしまったのです。でも大半の台湾人の考え方はゆるいですから、彼女の意見についていけません。しかも会長は体調を崩してしまい、会社に来られなくなってしまったので、会長に言われたことを実行しても、社内の管理職以上の人の中に味方がいない状態でした。
代替わりでやり方や優先順位が変わってしまった
会長が退いた後は、二代目が継ぐことになっていて、実は既に総経理として会社の経営に携わっていました。
会長が、これまで日本路線重視だったのに対し、二代目はどんな人かというと、アメリカ留学歴のある方で、営業やバイヤーの方面よりもどちらかと言うと管理部門に向いている方です。とても真面目な性格で、社内の仕組みを整備したりするのは得意ですが、先代のようにどんどん新商品を開発して売り込んでいこう!と言うタイプではないのです。
さらに、日本語もたしなんではいますが、社長が本格的に勉強したのは英語です。先方の社長や本部長が英語が話せない場合、いくら日本人スタッフが通訳すると言っても、面会を渋ることが多くありました。この後、この会社は会長時代の日本市場重視から、徐々に欧米重視にシフトしていきます。
新しい部門長の考えが分からず、すれ違う
会長の具合が悪くなってきた時点で、鈴木さんの部署の部門長には、新しい部長が就任しました。この方は日本語が話せる方だったので、今後はうまくいくのかな?と思っていました。
しかし、鈴木さんは結局この部門長ともかなりすれ違います。
さて、この部門長ですが、この会社の中でいくつか部門がある中でも、現役では唯一日本語が話せる役員となりました。このため日本市場を担当している社員(日本人も台湾人も)を、部門を超えて、この人が管理すると言う案が持ち上がりました。
しかしこの本部長は、他部署の日本市場メンバーについてほとんど知りません。ということで、一人ずつ面談をすることになりました。
ある日私も呼ばれました。最初は何か難しいことを言われるのでは?とドキドキしていましたが、面談で聞かれたことは、例えば「簡単に自己紹介して」「台湾に来てどのくらいになるの?」「台湾は好き?」「お昼はどうしてるの?誰と食べに行ってる?」とか、いわゆる雑談です。
一言にまとめると、「会社や、自分の部門に馴染んでいるかどうか」に関する質問ばかりでした。私は、この会社でもカルチャーショックは色々遭ったし、所属している部門には、日本語を話せる人もいませんでしたが、私の部署の部門長は「何をどうしたいのか」、「やるのかやらないのか」などの、指示をシンプルな言い方で、はっきり伝える人でした。他のメンバーも留学経験がある人も多く、いい意味で伝統的でない・フランクな同僚たちでした。以前勤めていた会社は、社長に質問してもオブラートに包んだ答えしか返って来ず、毎日顔をこわばらせながら過ごしていた時のことを思うと、仕事はとてもしやすい環境でした。
前職でひどい目に遭っていましたので、私にとっては、前の会社よりも、この会社の環境は比較的よかったのです。ですから、「台湾は好き?これからもずっと残りたいですか?」と聞かれたらもちろん「大好きです。ずっといたいです」と答えます。それを聞いて部門長は安心したのでしょう、部門長はほとんど私のことは呼び出さなくなります。
一方、鈴木さんの面談はどうだったのでしょうか…。部門長面談は一対一でしたので、直接は見ていないのですが、台湾のことは好きではないと答えたそうです。別に台湾のことが嫌いなこと自体が問題なのではなく、鈴木さんの態度が、他の同僚に悪影響を与えると思われ、問題視された可能性はあると思います。
鈴木さんは、担当している部門の部門長と言うこともあってか、その後も数回部門長に呼び出されます。そしてある日、
「日本人にしかできない仕事をしてほしい」
と言う、とても曖昧な内容の指示を出されます。
「日本人でしかできない仕事」って…日本のビジネスの進め方を理解していて、日本の取引先と社内との調整役をすることや、日本市場の新しい情報の収集などがそれに当たると思います。こうしたことは、鈴木さんは既にできていたのではないか?と思うので、一体何をどうしてほしいのか、余計にわかりません。
鈴木さんは自分でも考えてみましたが、やっぱり「具体的に何をどうしたら」本部長が満足するのかわかりませんでした。そこで、本部長と再度面談します。すると本部長は、
「Kさんみたいな仕事をしてほしい」
と言うのです。
Kさんと言うのは、鈴木さんの隣の部署で働いている、ベテランの日本人社員です。このかたは日本で営業職の経験がある方で、日本と台湾、両方の取引先や、マーケットの情報などにとても詳しく、口語通訳している時も、その数年先のことまで見据えて話をするような凄い方でした。日本の取引先が台湾に来た時も、会社とは別に自分でもおもてなしをしたり、話題も豊富で、先方担当者の心をつかむような人でした。とにかく、経験があることはもちろん、オールマイティなスキルの持ち主だったのです。
「Kさんみたいな仕事をしてほしい」と言うのも、どう言うつもりで言ったのかとても曖昧ですが、それを聞いた鈴木さんは「自分にはとてもできない」と思ってしまいます。もし私だったら「〇〇の方面からできるようになるよう努力します」などと、自分が達成しやすい方向に話を持って行ったと思います。でも鈴木さんは真面目な人なので、「無理だ」としか思えなくなってしまいます。
「日本人にしかできない仕事をしてほしい」「Kさんみたいな仕事をしてほしい」など、言い方は曖昧でしたが、たいがいの現地採用の日本人の役割が台湾と日本とのつなぎ役・調整役です。ものすごく好意的に受け取るのならば、もしかしたら部門長は、日本の取引先だけでなく、台湾人の上司や同僚ともうまくコミュニケーションをとって、スムーズに案件を進めてほしい、と言いたかったのかもしれません。(まぁ、だとしても相当わかりにくいですよね…。)
突然クビに
ある朝クビを言い渡される
会長が亡くなってしまい、告別式が無事済み、しばらくたった頃のことです。ちょうど他の部門の日本人社員が全員出張でオフィスを開けていた日に起こりました。(日本人同士で協力し合わないように、わざとその日を狙ったのでしょうか?実際のところはわかりません。)
午前中、鈴木さんは部門長に呼び出され、「これまで色々と希望をあなたに伝えてきて、それが実行される日をずっと待っていた。でも、今も私が希望する仕事ができていない。もう待てないので、本日付で退職して欲しい」と言われます。
まさか退職を迫られるとは思っていなかったので、突然このようなことを言われた鈴木さんは途方にくれます。相談しようと思っても、ちょうど日本人の同僚もおらず、できません。
人事に相談したところ、人事担当者と、日本語がとても流ちょうなベテラン台湾人社員と一緒に昼食を取ることになりました。
そこでなぞの「中国語問題」が出て来ます。
「中国語力が十分でない」?問題
鈴木さんが、何も悪いことはしていないのに、解雇されるのはおかしいという話をしたところ、人事は「でもやっぱり中国語のレベルがあまり高くなかった」という話を持ち出してきます。この方は、鈴木さんが入社したころは、鈴木さんの中国語が上手だと言っていた人たちのうちの一人です。矛盾しています。
しかし、ベテラン台湾人社員も「うーん、それはしかたないよね」という風に同調します。入社した時はチヤホヤしてきたくせに、会長がいなくなった途端みんなの態度が手のひらを返したように変わってしまいました。
結局ランチの場で、人事ら先輩社員には「どうすることもできない」としか言ってもらえず、状況は何も変わりませんでした。結局同族経営で組合も何もないので、上が決めたことには逆らえないのですね。逆らったらもしかしたらクビにされるかもしれません。
(だからたくさんの台湾人は不満があっても社内で訴えたりせず、もっといい条件のところに転職してしまうのです。そして会社の悪いところはいつまでも改善されません。)
もう何を言っても聞いてもらえず、結局午後に、仕方なく退職する手続きをします。人事からは会社都合で退職してもらう時の補償金(遺資費)の話をされます。この補償金を出すことで、一応合法な解雇となるようです。
その日の午後遅く、就業時間を越えた後くらいに、鈴木さんから私に、今日付で解雇されてしまったという連絡を受けました。出張帰りだったのでバタバタしていましたが、電話で話を聞きました。それでも、もうすでに退職に関わるすべてのことが終わってしまっていたので、私が口をはさむ余地はどこにもありませんでした。
どうすればクビにならなかったのか?
中国語力不足ではなく、空気が読めなかっただけ
確かに鈴木さんの中国語はネイティブ並ではありませんが、仕事をする上では問題なく意思疎通ができるレベルで、まじめな性格なので、専門用語も次々と覚えていきました。
一方、私は入社当初、ごく簡単な中国語しかわかりませんでした。最初は本当に、「〇〇と言う商品を何キロ買う」とか、「〇〇という試験資料を請求する」とか、そういう中国語がなんとか分かる程度でした。当初会議で話されている中国語は、ほとんど内容が分からない状態でした。
ただ、一番近い同僚が英語を交えて説明してくれたことや、直属の部門長の指示が明確だったことから、次第に慣れていきます。それでも中国語は本当に初級で、詰まったりすることはもちろん、単語を言い間違えたりして何度も言い直したりということが頻繁に起こっていました。もし中国語に問題があるというのなら、鈴木さんよりも私のほうがよっぽど問題があると思います。
鈴木さんが人事担当者に「中国語力が不十分」と言われた、と聞いた時は、ただ単に鈴木さんの粗探しをしたくてそういうことを言っているんだと思っていました。でも今思えば、中国語そのものの問題ではなく、行間を読めないということを言っていたのかもしれません。台湾も、日本ほど頻繁ではありませんが、オブラートに包む表現をしたり、含みを持たせたりと、とにかく直接言葉にしないけれど、何かの意図が込められていることがたくさんあるんです。そういう、相手の言葉のニュアンスとか、気持ちを汲めなかった結果、言葉の意味がわかっていないと思われてしまったのかもしれません。
それであれば、私は一度、一体何を考えているかわからない社長から突然解雇された、という恐ろしい目にあっているので、上司の心の動きには敏感です。中国語そのもののレベルは低かったですが、台湾人上司の気持ちを察する力は鈴木さんよりもあったかもしれません。
メールタイトル問題の解決方法 – 日本式にこだわるよりも、社長や役員のサポートが優先
実は私もメールタイトルの文字化けにはとても困っていました。送った側も受け取った側も、あとでメールを見たりするときとても不便です。
でもよくみると、日本特有の文字—ひらがな・カタカナ・日本特有の漢字だけが文字化けしています。
そこで、メールタイトルを英文表記に変えました。これでシステムのチェックなどの大掛かりな確認作業は必要なくなり、役員にとっても管理が便利になりました。と言うのも、新社長や役員は日本語よりも英語が得意ですから、会社の中で、日本語よりも英語のほうが重宝される言語になったのですね。
代替わりの後、お付き合いの深い取引先が来たときは社長も会議に参加し、共通言語として英語で話が進められました。私は社長や役員ほどはうまく話せませんが、英語圏での留学経験があり、話していることは理解できますので、役員の補佐として議事録の作成をしました。
英語だと、社長が直接相手方と意思疎通できるだけでなく、日本語より論点が簡潔で明確になることが多くあります。日本語は、使わないように気を付けていても、どうしても婉曲表現が多くなってしまうので、会議には向かないことがあります。社長が得意な英語で直接取引先とやり取りできたことは、台湾側・日本側お互いの距離も近づいてよかったと思います。
ところで、実は鈴木さんも英語圏への留学経験がありました。でも、日本式にこだわるあまり、そのことを活かすチャンスを逃してしまいました。
ステークホルダーの存在を忘れるな
もちろん仕入先もとても大切ですが、鈴木さんの態度は、日本の仕入先側に寄り添い過ぎて、雇い主が誰なのか、お客様が誰なのか、自分のお給料はどこから来るのかを勘違いしたものだったと思います。こういう勘違いはフレッシュマンに多いですが、今回のように社会人経験のある人にも起こってしまうことなのですね。
海外で現地企業に勤める時や、日本で外資系企業に勤めるとき・・・日系でない会社に勤めていて、かつ日本企業との取引をするときは、利害関係者がいったい誰なのか?自分の雇い主が誰で、一番誰の得になるよう動くべきか?、よく理解して働かなければならないと思います。
ただ、だからといって鈴木さんのしてきたことがクビに相当するか?というと、絶対にそんなことはないと思います。仕事は真面目で、早くて正確です。間違ったことは何もしていません。
しかも、この時鈴木さんは入社後約半年以上過ぎていました。試用期間の3か月はとっくに過ぎており、「会社の期待していたレベルに達していないから」という理由には無理があると思います。
本当の解雇の理由は、この時期はちょうど会長の告別式も終わって一段落したころだったので、会長だけに気に入られていた彼女を切るのにちょうどいい時期だと考えたのでは?と邪推してしまいます。
さいごに:コテコテの台湾系企業に向いている人・向いていない人
台湾の現地採用の日本人の仕事には、多かれ少なかれ台湾側と日本側、台湾人と日本人の調整役の役割が含まれると思います。「板ばさみ」になることは仕事の一部なのです。
台湾で現地の会社に勤める時は、あまり台湾色に染まりすぎるのも問題ですが、ある程度柔軟性がないと続けられないと思います。
特に台湾系の企業に勤める時は、たくさん方便が必要だと思います。台湾人上司は時々とんでもないリクエストをしてきます。この世にありもしない商品規格の問い合わせをしろと言ったり、突然膨大な量の資料請求をして今日中にほしいと言ってきたりします。取引先から「待ってほしい」と言われているのに1日に何度も出荷スケジュールを聞いてくることもあります…。
台湾人の上司に言われたことを、日本企業に対して直接やったり言ったりすると角が立つことが多すぎます。かと言ってそれを直接台湾人上司に言っても理解してもらえないことも多いです。自分の裁量で許される範囲で、機転やとんちを聞かせて、方便で角を立てないようにしつつ案件を進めるのです。これは心の中に少し「ゆるさ」、「柔軟さ」を持った人にしかできないと、私は思います。日本人の中でも、特に真面目で几帳面なタイプの人に、台湾系企業で働くのはおすすめできません。
以上、私の同僚が解雇されたてん末と、解雇された理由(推察)についてでした。何かの参考になればうれしいです。
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